教育・子育て

【絶対ダメ!】ゴーレム効果が子どもに与えるネガティブな影響

現地校に通う6年生の娘。
元来明るくオープンな子なので、帰宅してから最低1時間は、学校での1日の出来事を事細かく私に説明して聞かせるのだが、先日、少し思いつめた表情でつぶやきました。

「学校の先生って、子どもが好きだから教師になったはずだよね?
それなのにどうして、子どもにラベル張りたがるんだろう?」

ラベル?
「レッテルを貼る」では?…

要約すると以下のような出来事が学校であったそうです。


クラスメイトの男子2人は身体は大きいが、力がありすぎて乱暴。その割に、精神的に幼めなので場の雰囲気や先生の様子を読むことができない。授業中は何をさせてもダメなので、成績は決していいとは言えない。身体が大きいからか、男子が5、6人で悪い事をしていても、先生に見つかり叱られるのは必ずといっていいほど彼ら2人のみで他の男子は捕まらない。どの先生にも、うちのクラスで問題があると彼ら2人だろうというフィルターがかかっているようで、傍からみていてもフェアじゃない。たいして悪いことをしなくとも、彼らだとわかるとすぐに校長室に連れていかれる。

逆のこともよく起こる。

成績が良くずるがしこい女の子は、自習中騒いでいても叱られない。授業中間違った答えを言っても、「何か勘違いしちゃったかな?」と先生がフォローする。

両親が医者で、PTA役員をやっている男子は先述の2名と一緒に大騒ぎしていても決して捕まらない。

ドイツも日本の学校とあまり変わらないと思いませんか?

今日は、ピグマリオン効果と、反対の作用を及ぼす「ゴーレム効果」について考えてみましょう。

結論からいうと、子どもに接する際には、ピグマリオン効果よりも「ゴーレム効果に対して注意する」ことが重要です。
心理学でよくいわれるように、ネガティブなものを避けようとする→逆に意識しすぎて引き寄せるという現象もありますので、ここは素直にピグマリオン効果とゴーレム効果について理解し、子どもとの接し方に活用していきましょう。

ピグマリオン効果とは?

ピグマリオン効果とは、心理学者のロバート・ローゼンタール氏らが実験によって明らかにした「期待と熱意ある働きかけを受けると、相手がその期待に応える成果を発揮する」という心理効果。別名「教師期待効果」とも呼ばれています。
「教師が生徒に期待をかけると、生徒の成績が伸びる」などが、ピグマリオン効果の例として挙げられます。

参照:Rosenthal, R. & Jacobson, L.:”Pygmalion in the classroom”,1968

名前の由来

ピグマリオンは、ギリシャ神話に登場する才能あふれる彫刻家の名前です。彼は、自分が彫り上げた女性像のあまりの美しさに、心を奪われます。ピグマリオンの強い願いをアプロディテという女神が聞き入れ、彫刻に生命を吹き込んでくれるというお話。

「Greek Legends and Myths」https://www.greeklegendsandmyths.com/pygmalion.html

この神話から、「心かの期待と熱意があれば、相手がいつかその期待に応えてくれる」という意味で、ピグマリオン効果と名づけられました。

ピグマリオン効果の懸念

もちろん、「ほめる方針」と「叱る方針」の二択であればどちらが子どもにプラスの影響を与えるかは明らかなのですが、かといって実際よりも持ち上げすぎるのもよくないのです。

『マンガでやさしくわかるアドラー式子育て』(原田綾子著)では、子どもを必要以上にほめることの副作用などもとりあげられています。ほめられることによって、子どもの「行動の目的」がほめられることになってしまうという弊害です。「結果」「能力」よりも「目標に向かって努力した課程」をほめるべきであると述べられています。

教育経済学者の中室牧子さんは著書『「学力」の経済学』(ディスカヴァー・トゥエンティワン 2015年)の中で、『「あなたはやればできるのよ」などといって、むやみやたらに子どもをほめると、実力の伴わないナルシストを育てることになりかねない。とくに、実際の子どもの成績がよくないときはなおさらです』とはっきりと批判されています。

また、大人にほめられると、その期待に応えようとしてしまうケースが特に女の子にみられます。行動指針がいつの間にか「どうしたら大人にほめられるか」になり、自立した思考を持たずに成長してしまう恐れがあります。

子どもを委縮させるゴーレム効果とは?

ピグマリオン効果とは逆の作用として、「ゴーレム効果」があります。

ゴーレム効果とは、「相手に見込みや可能性がないと思っていると、実際その通りになっていく」という心理効果です。この研究もピグマリオン効果を提唱されたローゼンタール氏によって発表されました。

ローゼンタール氏は、生徒らをランダムに「成績の良い生徒を集めたクラス」と「成績の悪い生徒たちのクラス」の2グループにわけ、各担任となる先生に「良いクラス」「悪いクラス」と伝えました。

それぞれの担当の先生は先に述べられた成績を信じて指導した結果、「成績の良い生徒たちのクラス」と伝えられたグループは成績が上がり、「成績の悪い生徒たちのクラス」と伝えられたグループは成績が下がりました。

この実験結果により、「教師の期待が子どもたちの成績を上げる」ピグマリオン効果と同様に、「教師が期待しない」→「子どもたちの成績が下がる」という因果関係が成り立つわけです。

例えば、兄弟のいるお母さんが弟に対して「この子は優秀な兄と違って、将来伸びないだろうな」と親が思っていると、期待されていないことが暗黙のうちに伝わり、成長に悪影響を及ぼすということです。

ゴーレム効果を避けるには?

それではどうしたらゴーレム効果による悪影響やピグマリオン効果による副作用を避けることができるのでしょうか?

期待や結果ではなく、行動ベースで語る

親としてどうなってほしいか、という期待や結果ではなく、どうしてその行動をとったのかという課程や努力をほめてあげましょう。

「この子は〇〇な子」という過去からの思い込みをなくし、目の前の子どもと向き合う

正直、これが大人にとって一番難しいかもしれません。

たとえば、普段から不注意で飲み物をテーブルにひっくり返してしまう息子とレストランへ行きました。息子がはしゃいでオレンジジュースのコップをおもわず倒してしまった際のあなたはどんなリアクションをしますか?

「なんであなたはいつもそうやって気を付けないの!」とおもわず叱ってしまいませんか?

この一言でさえ、「いつも注意力が足りない子ども」という子どもに対するネガティブイメージが含まれてしまっています。このように何度か叱られ続けた結果、本人も「ぼくはそそっかしくてすぐ失敗してしまう子なんだ」と思い込んでしまう恐れだってあるのです。

大きな声で叱らずとも、子ども自身も外出先で失敗してパニックになったり落ち込んだりしているかもしれない。とりあえず、こぼれた飲み物を片付け、「なぜ飲み物がひっくり返ってしまったんだろうね?」「飲み物はテーブルの奥に、箸を持つ手の邪魔にならない場所に置こう」と考えさせ、次につなげることができれば、親子ともに幸せな時間を過ごせるでしょう。

感情をおさえて、まず一呼吸

子どもにネガティブな言葉をかけそうになってしまったときは、グッとこらえ、深呼吸してみましょう。あなたが投げる言葉がこれからのその子の姿を形成するとしたら、どんな言葉を選ぶべきかわかりますよね。前向きな言葉を、粘り強くかけつづけましょう。

<おまけ>ゴーレム効果をくつがえす子どもたちの物語「逆ソクラテス」

今回の出来事がピグマリオン効果とゴーレム効果について親子で話し合うよい機会となりました。

ところで「教師期待効果」(ピグマリオン効果の別名)について、おもしろい物語を読んだことがあったのでご紹介します。

「逆ソクラテス」伊坂幸太郎著

担任クラスの生徒たちに、「優秀な子」「見込みがない子」とレッテルを貼る教師に小学生の子供たちが小さな反逆を試み、先生に考えを改めてもらおうと団結する物語です。それは自分たちのためでも、「見込みがない子」のためでもない、未来の誰かのためだと話し合う子どもたちはもしかすると大人以上に冷静に世の中を受け止めているのかもしれないと考えさせられます。

おわりに

ピグマリオン効果とゴーレム効果について、いかがでしたか?

「思考や言葉がうみだす効果」は私たちが想像する以上に大きいのかもしれません。ほめ過ぎず、でもネガティブにとらえ過ぎず、目の前の大切な子どもと向き合うのは簡単なことではありませんが、少しずつ、お互いに幸せな親子時間を過ごせますように。