イエナプラン教育って耳にしたけど、オルタナティブ教育の一つかしら?どんな教育なの?
イエナプラン教育はオルタナティブ教育の一つです。オルタナティブとは英語の「alternative」=「別の」選択肢を指し、主流とは異なる別の選択肢となる教育方法を指しています。モンテッソーリやシュタイナーなどが知られています。
それでは今日はイエナプランについて調べてみましょう。
イエナプラン教育とは?
日本イエナプラン教育協会(*1)によると、イエナプラン教育は「一人ひとりを尊重しながら自律と共生を学ぶ」をモットーに、学校は主体となる子ども、教師、親が形成する「生と学びの共同体」であるべきと考えています。
イエナ教育(Jena-plan)はドイツのイエナ大学が1926年に第4回NEF国際会議(New Education Fellowship)で発表した研究報告をもとに誕生しました。その後、40年近い年月を経て、1960年代にオランダの教育界で広く発展します。
ドイツにはイエナプラン教育を導入している学校が現在約40校(*2)、一方、オランダでは正式にイエナプラン功を奏する学校の数は現在でも200個余りで全国に占める割合は約3%です(*3)
ドイツ国内におけるイエナプラン校はオランダと同じくほとんどが国営で、学費が税金でまかなわれています。これらの学校でも普通校と同じく、通常の卒業およびアビトゥア(大学入学資格)の取得も可能です。
ドイツでイエナプラン教育があまり広まらなかった理由として、よく時代的背景が挙げられていますが、個人的には4年生の段階で大学進路がほぼ決まってしまう教育システムが主なドイツでは、相対的な成績の評価が重要視されていたというのもあるのではないかと思います。

イエナプラン教育の特徴
イエナプラン教育は、他者の個性を認め、グループで協働して活動できる自立した子どもを育てることを目標にしています。
主に次の5つの特徴があげられます。
異年齢のグループ編成
2-3年の異年齢で構成されたグループ(「ファミリーグループ」)で活動します。
4つの基本活動
授業は科目ごとのカリキュラムで区切られるのではなく、「対話」「学び」「仕事」「催し」という4つの活動をベースに行う。グループで対話や協力しながらこの4つの活動を実施することで、子どもたちは他と「共生」する力を養う。
①対話
子どもたちと教員が円になって、お互いに向き合いながら他者の意見を聞き、自分の考えを発信する。「自分とは異なる他者の許容」を念頭に、他者の話をきちんと聞くことを学ぶ。

②遊び
遊びの時間はそれぞれのこどもたちの興味により、スポーツや演劇などさまざまなアクティビティが行われます。
③学習(仕事)
日本の一般的な学校で行われる学びの部分がこの活動です。自立活動と協働活動の2通りの方法で実施されます。「学ぶことは楽しい」と子どもたちに感じてもらうことを目標にしています。
④催し
学校行事や友達の誕生日、季節折々の催しを通じて、共生していく体験を重ねます。
ワールドオリエンテーション
ワールドオリエンテーションと呼ばれるファミリーグループ活動は、子どもたちが本物の経験から得た問いに基づき探求する「協働活動」です。
共同体として共に学ぶ
インクルーシブな教育を目指し、障害児も含めそれぞれの個の違いを尊重します。
イエナプラン教育のメリット
主体性が身につく
イエナプラン教育の時間割の代わりとなる「ブロックアワー」とよばれる各々の予定表では、それぞれの発達段階にあわせた週の課題と挑戦課題を子どもが自ら計画します。このブロックアワーは今の自分の状況と興味を照らし合わせ「何を学ぶべきか」を主体性をもって決定するスキルと自立を促します。
協調性が身につく
障害を含め、各々の違いを認めそしてグループメンバーとして「インクルシブ」する姿勢は、子どもに他者との支え合いと社会性を学ばせてくれるでしょう。
自己肯定感が高まる
一般的な同学年でクラス編成された学校での授業と違い、相対的な評価ではなく子どもたちの活動プロセスそのものがフォーカスされるため、クラスに「優秀な子」「できない子」の優劣が生じません。ひとりひとりの個性に合わせた役割を担うことで、自身に対する肯定感も育まれます。
イエナプラン教育のデメリット
普通の学校システムに適応が難しい
イエナプラン教育が導入されているのは、2020年現在では小学校のみです。(2019年に日本で初めてイエナプラン教育を取り入れた小学校、大日向小学校は2022年に中学校も設置予定)
これはどのオルタナティブ教育にも当てはまることですが、中高に一般的な相対評価や教師による一方通行形式の授業が実施される学校を進学先として選んだ場合、そのギャップに戸惑いを感じてしまうかもしれません。
イエナプラン教育を受けられる学校
2020年現在、イエナプラン教育を受けられる日本国内の学校は、以下の2校のみです。
学校法人茂来学園 大日向小学校
私立大日向小学校は、長野県南佐久郡佐久穂町に設立された、日本初のイエナプラン教育導入校です。森林や川に囲まれた自然豊かな環境は子どもを育てるにはピッタリです。前述の通り、2022年に中学部も設立予定です。学童保育「ひなたぼっこ」や「大人のイエナプランスクール」をみても、保護者の方々と地域の住民が協力して子どもたちをサポートしていく地域環境がうかがえます。
(参考:大日向小学校)
広島県福山市常石小学校(2022年導入予定)
福山市常石小学校で、2020年から2年間を移行期間とし、1~3年生の間で異年齢グループによるイエナプラン教育活動を導入しています。元々は通常の公立小学校ですので、今後どのような程度で教育活動が導入されていくのか、わかりしだい更新していきます。
(参考:福山市ホームページ)
国内にはまだイエナプラン教育が受けられる導入校が少ないことから、活発なオランダへの移住を考えるご家庭もいらっしゃるようです。
まとめ
イエナプラン教育の特徴やメリット・デメリットについて調査しました。イエナプラン教育は学校を、子供たちが中心とし教員と親権者の3者からなる「生と学びの共同体」としてこどもたちが安心と信頼を保証された場所として提供しています。
日本の教育や受験システムのあり方との兼ね合いから、導入においては難しい点もありますが、自分の学びを自分で組み立てる自立した学習方法はどんな人間にも必要となるスキルではないでしょうか?